目次
- 運送事業者にもDXは必要か?
- 株式会社城山が見た運送事業者のDXの成功事例
- DXに最終的に魂を入れるのは経営者の覚悟という側面もある
- 改めて「DXが運送事業者にもたらすもの」とは?
- DXには時間がかかることをリスクとして認識してほしい
株式会社 城山 名古屋営業所 課長代理 第1級陸上特殊無線技士・運行管理者資格(貨物/旅客) 本田 寛朗 氏 株式会社城山について 兵庫県に本社を置く、創業50年を超える通信機器の商社。関西中心に中部・関東にも拠点を構え、 アライアンス先のネットワークは全国に渡り、全国規模のサポート体制をもつ。 提案→導入→運用→アフターサポートをワンストップで実現。 サポート業界は多岐に渡り、運送事業様へも、他業界での成功事例をヒントに、 カスタマーサクセスにつなげる等、顧客志向にこだわったサービス展開を行う。 株式会社城山 公式ウェブサイト https://www.shiroyama.co.jp/
運送事業者にもDXは必要か?
聞き手:最近あちこちでDX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉を聞きますけど、運送業のように人手が絶対に介在する分野でもDXを考えなきゃいけないんでしょうか?
本田さん:いきなりそもそも論ですね。弊社が言うとポジショントークかと思われるかもしれないですけど、やっぱり運送事業者の方もDXは考えた方がいいと思いますね。
聞き手:運送業とDXがどうしても結びつかなくて…
本田さん:DXというか、運送業でもIT化は進んでいます。2015年に全日本トラック協会が情報化推進事業というのを掲げ、その時に「動態管理システム」というのを普及させました。 「動態管理システム」というのは、平たく言えば、リアルアイムに、PCで見られる地図上にトラックの位置を表示させて、どこにどの車両がいるのか見られる仕組みですね。
聞き手:業務の「見える化」ですね。
本田さん:そうですね。
聞き手:そうすると何がいいんですか。
本田さん:こういう仕組みができるまでは、一度事務所を出発すると、そのトラックがどこで何をしているか、帰ってくるまでわからなかったんです。 ところが、動態管理ができるようになると、リアルタイムで状態がわかる。
聞き手:はい。
本田さん:そうすると、急な荷物の引き取り依頼なんかも、「あ、このトラックが空車で荷主の近くにいるな」ということが判るようになって、「悪いんだけど、ここ行って荷物取ってきてくれないか」とドライバーさんに頼めるようになったんですね。
聞き手:ああ、急な依頼にも機会損失しないと。
本田さん:それから、荷主さんの方も「今うちの荷物どこにあるの?」と運行管理者さんに電話すれば、パソコンを見ながら、「あーちょうど今、XXの近くですね」「そしたらもうすぐ着くね」とやり取りができるようになります。 この動態管理の普及で、だいぶ業界が変わってきたと思います。
聞き手:運送業もIT化が進んできている…
本田さん:さっき言った全日本トラック協会がそういう意識付けをして、さらに動態管理の機能があるデジタコが登場し、それから国土交通省がそういう装置に補助金を出すようになった。 それぞれの登場順序は多少前後しますけど、意識としてはそんな感じです。
株式会社城山が見た運送事業者のDXの成功事例
聞き手:とは言え、IT化ではなくDXというとまたちょっと一段高い感じというか…
本田さん:我々もITとDXってどこがどう違うのかハッキリとは言えないんですけどね。
聞き手:それでも本田さんは冒頭で運送業の人もDXを考えた方がいいと仰ってました。
本田さん:それはやっぱりデジタルでビジネスモデルがガラッと変わるんです。
聞き手:ガラッと。
本田さん:私たちのお客様で言うと、某空港の近くに海外からの航空貨物を扱う運送事業者さんがいるんですね。 結構大きい会社で自社車両が100台、提携先を含めると300~500台ぐらいをコントロールされています。
聞き手:トラック100台というと結構大きい運送会社さんですね。
本田さん:で、その会社は航空貨物を扱っているんで、社長が航空会社の方と話をすることがあるらしいんです。 ある時、その航空会社の方に航空業界が儲かる秘訣みたいなのを教わったと。
聞き手:儲かる秘訣。
本田さん:それは何かというと、飛行機が陸にいる時間をなるべく短くすることだと言うんです。つまり、なるべく使われていない時間をなくすってことですね。 それって、トラックもそうなんじゃないの?と航空会社の方に言われたと。
聞き手:ああ!確かに!
本田さん:それまで、というか、今もそうですけど、運送業界の慣習として、1人のドライバーさんに対して1台のトラックという考え方が主流なんです。私は世代ではないですけど、菅原文太さんの「トラック野郎」なんかそういう世界ですよね。一番星という名前を付けて、自分用にどんどんカスタマイズする。
聞き手:いわゆるデコトラですね。

本田さん:そうです、そうです。ああいうのは、トラックを複数人でシェアしてるとできないですよね。ほかの人が乗ったら、なんじゃこれは、となる。
聞き手:でも、飛行機は違うと。
本田さん:そう、当然パイロットさんは自分の飛行機を持ってないわけです。ピカチュウジェットなんかも、パイロットさんがポケモンが好きだからやってるわけじゃなくて、会社のプロモーションでやってる。そうすると、操縦する人は十分休ませるけど、その間別のパイロットさんが飛行機に乗って、その飛行機で売上を稼ぐ。オシムさん(※)ではないですが、「ボールは疲れない」ならぬ「飛行機は疲れない」わけです。
※編集部注:本田さんは元日本代表監督イビチャ・オシムさんの言葉だと勘違いされていますが、 実際は元FCバルセロナの監督ヨハン・クライフさんの言葉です。 当時は「ボール狩り」と呼ばれ、世界を震撼させたオランダ代表の「トータル・フットボール」ですが、 5レーン理論で前から嵌めに行くのがスタンダードになった今、当時の試合(オランダxブラジル@西ドイツW杯)を DVDで見ると、牧歌的とすら言えるのは時代の流れですね。
聞き手:サッカーか何かのくだりはよく分からないですけど、飛行機は疲れないから飛ばせるだけ飛ばせばいいというのは、よく分かります。
本田さん:それって、トラックも同じじゃないですか?というのが、その航空会社の方の素朴な疑問だったわけです。
聞き手:そして、その運送会社の経営者の方も、どれだけトラックを休ませないようにするか考え始めたと。
本田さん:そうです。
聞き手:それがDXとどうつながるんでしょうか。
本田さん:それを実現するためには、「いつだれがどの車に乗っているか」「どの車が何時に戻ってくるか」「次の仕事を受けられるのはどの車なのか」、そういうことが見える化されてないとダメなんです。大前提として。
聞き手:ああ、それで最初の動態管理による「見える化」につながってくるんですね。
本田さん:飛行機は最初からその問題がクリアされてるんですけど、運送事業者はそこの仕掛けを最初に作っておかないと、うまくいかないんです。
聞き手:その運送会社はどうされたんですか?
本田さん:まず、クラウドのデジタコを入れました。クラウドのデジタコはIoT用のSIMが入っていて、リアルタイムに位置情報や実車空車の情報を運行管理者に教えてくれるんです。
聞き手:なるほど。
本田さん:その情報をベースに、なるべく車両を走らせるようにスケジュールを組んでいくわけです。荷主さんからの問い合わせに答えるために動態管理を導入するというのは、サービスレベルを上げるという意味では効果があると思いますが、このケースだともう目標値とか人事制度とか、そういうものが根本から変わってくるんです。このケースこそ、デジタル・トランスフォーメーション(DX)だと、私は思いますね。
聞き手:確かにビジネスの考え方が全然変わってきちゃいますね。
本田さん:そして、DXの一丁目一番地がクラウドデジタコですよ、とお客様には説明しています。まずは、そういうデータの可視化が何をするにも前提になるんです。何をするにもクラウドデジタコは必要なので、まずはこれを入れましょうと。
聞き手:すごくよくわかりました。
この航空会社の考え方は非常に大事だと思い、別途解説記事を用意しました。 お時間があればお読みください。 【補足記事】航空会社のビジネスモデルはどうなっているか?
DXに最終的に魂を入れるのは経営者の覚悟という側面もある

聞き手:でもクラウドデジタコを入れればすぐできるというわけでもないですよね。
本田さん:それはそうです。
聞き手:このケースの場合どういったところで苦労したんでしょうか。
本田さん:やっぱり、ドライバーさんの反発ですよね。
聞き手:それはそうですよねえ。菅原文太さんにあこがれてドライバーになったのに、この車はあなたのものではなくみんなのものなので、カスタマイズしないでくださいね、となったら働く意味がなくなっちゃうと感じるドライバーさんもいるでしょうね。
本田さん:結局、ここから先は覚悟の問題になってきます。とにかく、これでドライバーさんのお給料は増やせるはずだし、会社としてこの方向しかないんだ、と粘り強く説得し、それでもダメなら残念ながら会社を離れていただくと。
聞き手:うわあ…そうなっちゃんですね…
本田さん:幸運なことに、この会社はこの考え方で本当にうまくいったんです。今ではドライバーさんの求人も42万円のお給料で募集しているくらい。
聞き手:それは相当ですね。
本田さん:辞めていったドライバーさんも、もう一度働かせてくれないかと。
聞き手:気持ちはわかります。
本田さん:まあ、なかなか、そう言われても、ということみたいですが。
改めて「DXが運送事業者にもたらすもの」とは?
聞き手:一般論で言って、物流業界って今随分大変なんですよね。
本田さん:物流クライシスと言われて久しいですね。
聞き手:具体的にどういう問題があるんですか。
本田さん:端的に言って【上がらない運賃】【人手不足】【法令厳罰化】の3つです。先ほどの事例で言えば、DXで収益性を高めて、ドライバーさんにお給料の形で還元することで、【上がらない運賃】と【人手不足】を解消していますよね。
聞き手:先ほどの3つの問題の中で、【法令厳罰化】というのは。
本田さん:不幸な事故が何度か起こるうちに、規制が厳しくなっていくことを指しています。事故を防ぐために、規制が厳しくなるのはわかるんですが、ただ、そのたびに管理者側の負担がどんどん増えるんですよ。
聞き手:ああ、そうするとそこにも当然…
本田さん:そうですね。DXの余地はありますね。労働時間管理なんかが一番規制のあおりを受けているわけですが、そういうのも、まずはクラウドデジタコでデータを取って、そのデータを使って労働管理をする、というのがベーシックな考え方です。
聞き手:いずれにしてもクラウドデジタコが一丁目一番地。
本田さん:今の運送業の労務管理のルールは複雑すぎて、もはや人間じゃ無理なんですよ。私が扱っているクラウドデジタコには、労務管理オプションというのがあるんですが、すべての運送事業者さんが必要な機能だと思っているので、100%労務管理オプションも一緒にお勧めしてます。
聞き手:ハンバーガーと一緒にポテト、みたいな。
本田さん:それ以上ですね。
聞き手:それ以上ですか。
本田さん:それでも不要と仰る運送事業者さんもいることはいるんですけどね。ごくごく稀ですけど、そもそも、ホワイトすぎて残業すら発生しないとか。 まあ、そういうのは例外中の例外で、運送事業者さんに限らず、ほぼ存在しないですよね。
DXには時間がかかることをリスクとして認識してほしい

聞き手:とは言え、まだクラウドデジタコを導入しない運送会社さんもいるんですよね。
本田さん:そこなんですよね。
聞き手:どうしてですか。
本田さん:よく言われるのが、「使いこなせそうにない」とか、「まだ早い」とかですね。
聞き手:どう思われますか。
本田さん:これは間違いなく言えることなんですけど、クラウドデジタコを入れればすぐDX、というわけにはいかないんですね。先ほどの例でも、結構時間がかかってるんです。何が言いたいかというと、「まだ早い」と言っているうちに、挽回不可能なぐらい取り残される可能性があるということです。
聞き手:ああ。周りがデジタコを入れて、ああいうことやこういうことを実現し始めて、「よしウチも」と言って導入しても、そこに追いつくのによーいドンで何年後とかになっちゃう。
本田さん:そういうことです。その間耐えられるかということです。脅すような営業の仕方は絶対にしたくないんですが、ただ事実としてそうなんですよ。
聞き手:他社の収益性が上がっていると、当然ドライバーさんの確保なんかでも不利になる。
本田さん:他がもっといいお給料で募集しちゃいますから。
聞き手:アドバイスをするとすれば。
本田さん:新しい機械を入れるのって、当然大変だと思うんです。資金面、実際導入して使いこなせるのかという運用面、ドライバーさんにご納得いただくための説明も大変です。ただ、そういうことを一緒に乗り越えていくために私たちがいます。資金面も、こういう補助金が使えますよとか、使いこなし方もベーシックな操作法から、ビジネスへの活かし方のご相談。ドライバーさんへの説明なんかもご協力できます。なので、まずはご相談いただきたいです。
聞き手:東京のお客さんも本田さん指名で…(※)
※編集部注:本田さんの営業範囲は愛知・岐阜・三重などの中京圏が中心です。
本田さん:それは、ちょっとあれですけど、弊社にはたくさん優秀な営業がいますんで、まず代表にお電話いただければ、最適な人間をご紹介いたします。
聞き手:ちなみに城山さんが扱っているのは…
本田さん:富士通のクラウドデジタコです。編集部として言わせたい(※)んですね(笑)。私たちとしてはいい製品だと思っているので、自信をもってお勧めしています(笑)。
編集部注:「みんなの物流DX」は富士通デジタコを開発販売している株式会社トランストロンが運営しています。 ちなみに、富士通のデジタコ情報はこちらのサイトから↓ 富士通デジタコ公式サイト
聞き手:本日はありがとうございました。
本田さん:こちらこそありがとうございました。
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