目次
- テレマティクスとは
- テレマティクスの歴史
- テレマティクス導入の5つのメリット
- テレマティクス導入の3つのデメリット
- テレマティクスの活用事例
- カーナビ・ドライブレコーダー
- デジタコ(デジタルタコグラフ)
- 車両管理システム
- コネクテッドカー
- テレマティクス保険
- まとめ
ネットワーク環境の拡充により、IoT化(モノのインターネット化)が進む現在、「テレマティクス」というワードが注目されています。
テレマティクスは、自動車に関わる業務や管理を効率化するとされていますが、そもそもテレマティクスにはどのような意味と歴史があるのでしょう。
今回はテレマティクスの基礎知識に加え、導入によるメリット・デメリット、活用事例をご紹介します。
テレマティクスとは

テレマティクスは、遠隔通信(telecommunications)と情報科学(informatics)の、2単語を合成した造語です。
自動車の分野においては「リアルタイムな双方向通信を利用して、さまざまな情報サービスを提供すること」を意味します。
そして、リアルタイムな双方向通信を可能とするのが「自動車と通信システムを組み合わせること」です。
自動車と組み合わせる通信システムの具体例としては、通信機能搭載のカーナビ・ドライブレコーダー・デジタコ、ETC(有料道路の料金自動収受システム)の車載器などが挙げられます。
家電や住宅、そして車といったモノが、インターネットに接続されることを「IoT」(Internet of Things=モノのインターネット)と呼びますが、テレマティクスもIoTの一種ということができるでしょう。
テレマティクスの歴史

自動車におけるテレマティクスが一般に普及したのは、90年代以降と考えられます。
90年代に入ると、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)を利用したカーナビが登場し、正しい現在位置をリアルタイムで表示することが可能となりました。
さらに、1996年4月にはカーナビ向けの道路交通情報サービス「VICS」もスタート。2000年以降になると、各車両の情報を集約することで、天気や渋滞情報のリアルタイム提供が可能となり、利便性も大幅にアップしました。
その後も、テレマティクスサービスは拡充を続けており、 例えば2011年に発生した東日本大震災では、収集した情報に基づく被災地エリアの道路交通マップを公開し、円滑な救助活動をサポートしました。
テレマティクス導入の5つのメリット

社用車の管理にテレマティクスサービスを導入することで、以下5つのメリットを享受することができます。
- 業務効率化
- 業務負担の軽減
- ミスの削減
- コスト削減
- 事故防止・安全性の確保
①業務効率化
テレマティクスサービスの導入により、車両位置や運行状況のリアルタイムな把握が可能となります。
これらの情報と渋滞情報・天候情報などを組み合わせることによって、最適なルートを割り出すことができ、配達や営業の効率がアップします。
また、複数の車両を一括管理することで、円滑な指示出しも可能となり、配車効率のアップも実現します。
②業務負担の軽減
テレマティクスサービスの導入で業務効率化が実現すると、乗務時間の短縮や、管理業務の減少など、業務負担の軽減にもつながります。
また、車両管理システムの中には、運転日報・月報、業務記録簿などを無料で作成できるサービスもあり、ドライバーの業務負担を大幅に軽減することが期待できます。
近年、あらゆる業界で働き方改革の推進が求められていますが、テレマティクスは良好な労働環境の整備にも役立つサービスなのです。
③ミスの削減
人の手で行う業務ではどうしてもヒューマンエラーがつきもので、そのような業務が多いほど、ミスのリスクも高くなります。
多くのミスが生じると、見直しなどのために業務負担が増大したり、社会的信用を損なう要因にもなりかねません。
テレマティクスサービスを導入すると、一部の業務が自動化できるため、 ヒューマンエラーによるミスを削減することができます。
④コスト削減
テレマティクスサービスによって走行ルートを最適化すると、無駄な走行が削減でき、ガソリン代(燃費)の削減につながります。
特に管理する車両台数が多いほど、コスト削減できる金額も大きくなると考えられます。
また、走行ルートの最適化で業務効率が向上すると、車両の稼働効率も向上します。
車両の稼働効率が向上すると、限られた車両台数で業務をこなせるようになり、必要な車両とドライバーが減ることで、コスト削減できる可能性も考えられます。
⑤事故防止・安全性の確保
テレマティクスサービスを導入すると、車両の位置情報のみならず、事故防止・安全性の確保につながる以下のようなさまざまな情報が取得できるようになります。
- 走行速度
- 走行距離
- 急停止
- 急発進
- 急ハンドル
- 速度超過 など
また、これらの取得情報をもとにした、事故防止・安全性の確保のための機能には、以下のようなものがあります。
- アラートなどを通じてリアルタイムでドライバーへ安全運転を促す機能
- 運転データをもとにスコアをつけてくれる「安全運転診断」機能
- マップ上に事故の多い地点やヒヤリハットの発生場所を表示する機能 など
なお、安全運転教育においても、データに基づく客観的な指導が可能となるため、ドライバーの安全運転意識をさらに高めることが期待できます。
テレマティクス導入の3つのデメリット

テレマティクスの導入には大きなメリットがある反面、デメリットもゼロではありません。具体的には主に以下3つのデメリットがあるため、これらを考慮した上で、導入を検討してください。
- 導入・維持費用
- 個人情報漏洩のリスク
- 従業員側の抵抗感
①導入・維持費用
テレマティクスの利用には、料金が発生します。
具体的には、導入に際しての初期費用、さらにシステム利用料や通信費といった月額料金(維持費用)です。これらのコストは、管理する車両台数が増えるほど、増大します。
ただし、すでにご紹介したように、管理する車両台数が多いほどコスト削減の金額が大きくなることも期待できます。
場合によっては、コスト削減効果によって導入・維持費用が相殺できるケースもあるため 、試験的に導入してみるのも良い方法です。
②個人情報漏洩のリスク
テレマティクスを導入すると、車両をIoT化できますが、そのためにパソコンやスマートフォンと同じく個人情報漏洩のリスクが発生します。
例えば、SDカードへデータを保存するドライブレコーダーなどの場合、SDカードの紛失によって、第三者に動画が閲覧され、情報が漏洩する恐れがあります。
また車載器のデータは、利用するテレマティクスサービスの企業やテレマティクス保険の会社などに送られます。
各社ともにセキュリティ体制を整えてはいますが、これらの企業・会社がサイバー攻撃を受けた場合などは、情報漏洩するリスクもゼロではありません。
③従業員側の抵抗感
テレマティクスを導入すると車両管理がしやすくなる反面、車両の状況が見える化することで「行動を常に監視されている」と感じる従業員が出てくる可能性があります。
従業員の多くが抵抗感を示し、反発が多ければ、スムーズなテレマティクス導入を実現しません。
そこで従業員に対しては、テレマティクス導入のメリットをしっかり伝えた上で、従業員のプライバシー保護にも配慮しつつ、理解を得ることが求められます。
テレマティクスの活用事例

自動車分野においてテレマティクスはさまざまな形で活用され、サービス提供されています。具体的なテレマティクスの活用事例には主に以下の5つがあります。
- カーナビ・ドライブレコーダー
- デジタコ(デジタルタコグラフ)
- 車両管理システム
- コネクテッドカー
- テレマティクス保険
カーナビ・ドライブレコーダー
カーナビ(カーナビゲーションシステム)はかつて、目的地までのルートや位置情報を示す機能のみでした。
しかし、通信システムの搭載により、天気や渋滞などの情報をリアルタイムに知ることができるようになり、これらの情報を基にした高精度の到着予定時刻の予測も可能となりました。
また、地図情報が自動更新されるため、常に正しい地理情報で運転することができます。
ドライブレコーダーは、位置情報や走行速度などのデータを記録する機材です。
近年は、車両周辺の道路状況や運転席を常時録画できるドライブレコーダーも普及していますが、通信機能によって録画映像をクラウドへ自動保存する製品もあります。
デジタコ(デジタルタコグラフ)
デジタコ(デジタルタコグラフ)は、車の運行に関わる速度時間距離の記録が可能な機材です。
具体的には、最高速度、平均速度、走行時間、走行距離、急ブレーキ、急加速、停車時間といったデータをデジタル形式で記録できます。
現在はアナタコ(アナログタコグラフ)ではなく、デジタコを導入する企業も多く、例えば富士通のデジタコは6,500社超(20万台以上)で導入されています。
デジタコについては、GPS付き通信機器などを追加することでテレマティクスが可能となり、車両管理や安全運転に役立てることができます。

車両管理システム
車両管理システムは、車載機やスマートフォン、タブレットなどからの情報を管理するためのシステムです。
各車両の運転者や保険の加入状況といった情報から、事故やヒヤリハットが起きやすい場所のデータ、車両のリアルタイムな運行情報などに至るまでを一括管理できます。
なお、国内初の商用車テレマティクスは、2004年に運用をスタートした、いすゞ自動車の「MIMAMORI(旧名:みまもりくん)」です。
そんな、いすゞ自動車とトランストロン、富士通は2021年に新たな「商用車コネクテッド情報プラットフォーム」の構築に着手したことを発表しました。
新プラットフォームでは、物流業界の課題に対応する形で、富士通の最新DX技術が反映されます。
新プラットフォームのサービス提供は、2022年中の予定です。

コネクテッドカー
コネクテッドカーに対する考え方や定義は、自動車メーカーごとに少々違いがあります。
しかし、情報通信白書平成27年版(※1)において、コネクテッドカーは「ICT(情報通信技術)端末としての機能を有する自動車」 と紹介されています。
つまり、車載器などの通信機能を通じてテレマティクスサービスを享受する自動車は、コネクテッドカーの一種ということができるでしょう。
コネクテッドカーに対しては、ネットワーク経由で取得した情報を集積・分析することで、私たちの利便性等に寄与する新しい価値を生み出すことが期待されています。
(※1「情報通信白書平成27年版」総務省https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc241210.html)
テレマティクス保険
テレマティクス保険とは、その名の通り、テレマティクスによって取得した運転情報に基づいて保険料の算定を実施する保険です。
国土交通省は「自動車関連情報の利活用に関する将来ビジョン」(※2)において、重要テーマの一つに「テレマティクス等を活用した安全運転促進保険による事故の削減」を掲げており、テレマティクス保険による安全運転の促進に期待を寄せています。
そんなテレマティクス保険には、主に以下2つの種類があります。
・走行距離連動型(PAYD)
車載器などから車の走行距離を把握することで、保険料を算定します。走行距離と事故率は比例すると考えられるため、走行距離が伸びるほど保険料が高くなります。
・運転行動連動型(PHYD)
車載器などから、急ブレーキ・急発進・運転速度・ハンドリングといった運転特性のデータを取得することで、保険料を算定します。安全運転のドライバーに対しては事故リスクが低いと判断され保険料が安くなる一方、危険運転のドライバーに対しては保険料が高くなります。
(※2「自動車関連情報の利活用に関する将来ビジョン」国土交通省https://www.mlit.go.jp/common/001066865.pdf)
まとめ
テレマティクスは、業務効率化や安全運転などに役立てることができます。
テレマティクスは、社用車にカーナビ・ドライブレコーダー・デジタコなどを設置することで簡単に導入することが可能です。
ただし、これらの車載器に通信機能がない場合、テレマティクスの恩恵が受けられません。
テレマティクスの活用を考える企業は、オプションで通信機能を追加するか、通信機能付きの車載器の導入をご検討ください。
コミュニケーション効率の向上
動態管理システムの導入事例
「みんなの物流DX」メーリングリストに登録!
ご意見ご感想はこちらから!