目次
- 動態管理とは
- 導入のメリット
- 動態管理システム導入で成果を出すには
- 動態管理システムの選び方・比較ポイント(車載機別、目的別)
- 車載器の種類から選ぶ
- 目的から選ぶ
- 安全管理
- 日常業務の負担軽減
- 配送効率の改善
- コミュニケーション効率の向上
- 動態管理システム導入の流れ
- 動態管理システムの導入事例
- まとめ
「動態管理って何ができるの?」
「コスト削減できるって本当?」
具体的なイメージはわかないけど、「何となく良さそう」「役に立ちそうだから興味がある」そんな気持ちでこの記事を読んでいないでしょうか。
多くの業界でデジタル化がすすむ中、物流業界でも注目されるDX。しかし、アナログ文化が多く残る物流業界ではまだフル活用している企業は少ないのが現状です。
導入することで見込める効果は大きく分けて以下に3つです。
- 生産性の向上
- 労働環境の向上
- コスト削減
とはいっても、どのようなもので、どうして効率化やコスト削減が実現するのかなど、具体的にイメージがわかないと、なかなか導入に踏み切れないのではないでしょうか。 そこで今回は、動態管理システムの概要やメリットを説明します。選び方も紹介するので自社に合ったシステム検討の参考にしてください。
動態管理とは
動態管理システムは、GPSで位置情報を把握して管理できるシステムです。
特徴は、現状を見える化できること。状況を把握して改善点の洗い出し・改善策の実行をすることで、コスト削減や効率化などが実現できます。
たとえば、リアルタイムで各車両の位置情報を把握する、走行距離や稼働時間の管理をする、などが可能です。データは自動で記録されるので手作業で運行記録を書く必要がなく、業務の効率化が実現できます。
急ブレーキや急ハンドルなどの危険な動きを検出してアラートを出す機能もあります。活用すれば重大な事故を起こす前に予兆となる行動を把握し、運転指導ができます。
このように、改善に必要なデータをリアルタイムで記録・管理するのが動態管理システムの役割です。 車載器はデジタコ型やスマホアプリ型など複数の種類から選択できます。特徴をしっかり把握して、車種や求める機能から自社に合ったものを選択しましょう。
導入のメリット
動態管理システムを導入するとコスト削減や効率化ができたり、安全運転につながったりすると説明しました。しかし、まだ「よし!ではすぐに導入しよう!」とはならず「それで、どのくらい利益に貢献するの?」「費用対効果はどうなの?」が気になるところではないでしょうか。
ここからは、それぞれのメリットをより掘り下げ、具体的に「どういった機能」があって「どう活用できるのか」を紹介していきます。
生産性の向上
動態管理システムを導入すると、GPSを利用して各車両の位置をリアルタイムで把握できます。これにより、無駄のない配送や集荷指示などが可能になります。電話でやりとりしなくても、システムで位置を確認して最適なドライバーに指示を出すことができるのです。位置情報がひと目でわかるため、指示のミスを減らすことにもつながります。
また記録されたデータを分析することで、配送や営業のエリアを可視化し、広い視点でルートや車両配置の最適化が行えます。情報を可視化することにより重複やルートの無駄が一目瞭然となり、効率化へつながるのです。
さらに、営業の訪問頻度や移動効率、各営業担当のエリアを可視化し、頻度・ルート・エリアの最適化も実現します。顧客の重要度も考慮にいれれば、営業効率を格段に上げる強力な味方となるでしょう。
労働環境の向上
動態管理システムを活用すると、運転時間や休憩時間も自動的に記録されます。運転業務後に日報を作成するのに比べて時間と手間が削減でき、ドライバーの負担を大幅に減らせます。同時に、いつ出勤してどのくらい運転したのか、どのくらい休憩を取っていつ退勤したのか、など細かい勤務状況も自動で把握でき、長時間労働の防止にも繋がります。
物流トラックドライバーにとっては、急な集荷依頼をアプリのメッセージで受け取れるのも大きなメリットです。電話連絡だと運転中は取れずに折り返す必要がありますが、メッセージなら自分のタイミングで確認できて無駄がありません。 さらに、万が一事故を起こしてしまった場合も、車両の動きに関する詳細なデータが残っているので対応がスムーズです。非がない事故の場合、データが証明となり大切な従業員を守ってくれるのも大きなメリットの一つといえるでしょう。
コスト削減
車両を運行するにはドライバーの人件費、管理コスト、燃料代など安くないコストがかかっています。無駄な移動や作業を減らすことにより、これらのコストを削減できるのも動態管理の魅力です。
具体的には、日々の運行データを集めて分析し、あぶり出した無駄を省いていきます。走行データからドライバーごとの稼働状況を割り出し、会社や事業所全体での最適化を図ります。
その際、ドライバーだけでなく車両の稼働率を考えることも大切です。購入やリースなど車両本体のコストや維持にともなうコストも削減対象なのです。保有台数に対しての稼働状況を記録することで、無駄を減らしましょう。
リアルタイムで車両の位置を把握できれば、渋滞や通行止めなどの道路状況を考慮した効率的なルート指示もできます。小さな無駄も一つずつ省いていけば、積み重なって大きな違いとなります。
動態管理システム導入で成果を出すには
生産性の向上、労働環境の改善、コスト削減など、さまざまなメリットのある動態管理システムですが、成果を出すには3つのポイントがあります。
- 会社のメリットだけでなく社員のメリットも伝える
- データの活用法を考えておく
- 導入成果を共有する
それぞれ詳しくみていきましょう。
会社のメリットだけでなく社員のメリットも伝える
まず大切なのは「会社のメリットだけでなく社員のメリットも伝える」ことです。
従業員の気持ちになって考えてみましょう。ある日突然「GPSを使って管理する」と言われると、「見張られる」と感じてしまわないでしょうか。従業員が拒絶反応を示してしまうと、協力して効率化をすすめるのがむずかしくなってしまいます。
そうならないために、導入を決めたらコスト削減など会社にとってのメリットだけでなく「日報作成の手間が減らせる」「配送計画の確認や変更がスマホで簡単にできる」「最適なルート作成に役立つ」など従業員目線でのメリットもしっかり伝えてください。
取り組む下地を作っておけるかどうかが成果に大きく影響します。
データの活用法を考えておく
データを取得しても、記録として積み上げておくだけでは何も変わりません。動態管理システムを活用して得られる位置情報や走行データなどの活用法は、事前に決めておきましょう。
ポイントは、気づいた改善点についてどんなアクションを行うかまで具体的に決めておくことです。「毎月1日に配送ルートの見直しを行う」など行動を明確に定めておきましょう。
データの取得が目的とならないよう、システム導入後まで具体的にシミュレーションをして活用法を決めておいてください。
導入成果を共有する
導入して得られた成果は経営陣などの管理者だけでなく、ドライバーやオペレーターなど関係する全員で共有してください。
どれだけコストや残業、事故につながる危険運転が減らせたのかなど、導入による成果は積極的に伝えましょう。結果につながると行動に意味や価値を見出し、さらによい結果を得るにはどうすればよいのか考えるようになります。そうして個々人が能動的に取り組めば、さらなる成果が期待できます。
また、組織として改善に取り組む姿勢を得るためにも、導入成果の共有は欠かさないようにしましょう。
動態管理システムの選び方・比較ポイント(車載機別、目的別)
動態管理システムを選ぶ基準は、大きく分けて2つあります。
- 車載器の種類から選ぶ
- 目的から選ぶ
自社に合った車載器を選べるかどうかで、得られる成果が大きく変わることもあるので、ポイントをしっかり押さえましょう。
車載器の種類から選ぶ
位置情報把握のための車載器には主に次の4種類があります。
- デジタコ型
- OBD-IIポート型
- ドライブレコーダー型
- アプリ型
それぞれの特徴を把握し、自社に最適な種類を選択してください。
デジタコ型
速度、走行時間、走行距離などトラックの運行データを記録し、ドライバーの安全を守りながら業務の効率化に貢献するデジタコ。動態管理システム導入に活用すれば、さらに有効活用できます。
大型トラックなら国交省が型式認定したデジタコ機器の搭載が義務付けられているため、新たに機器の用意をすることなく動態管理システムの導入ができます。
※詳細を見る:https://www.transtron.com/itp/
OBD-IIポート型
自己診断装置OBD-IIのポートに差し込むタイプであれば、工事や配線が不要のため整備士でなくても取り付けられます。デジタコ型と比較すると、設置の簡単さが特徴といえます。小型や中型のトラックや営業車などデジタコを搭載していない車に取り付ける場合、簡便性がメリットとなるでしょう。
ドライブレコーダー型
危険運転を検知すると、動画と位置情報がシステムに記録されるなど、万が一の事故の際に役立つドライブレコーダーならではの機能を備えているのが特徴です。業務の効率化はもちろん、事故やトラブルが発生した際にドライバーや会社を守ってくれます。
アプリ型
特別な機器を用意しなくても、スマートフォンにアプリをダウンロードするだけで使えます。導入コストが低いのがメリットです。無料で使えるものもあり、「まずは使ってみて判断したい」場合に向いています。
ただし、バッテリー切れやGPS設定のミスなどでデータが取得できないリスクもあります。また、ドライバーの個人スマホを使用する場合には、勤務時間外はオフにするなどプライバシーを侵害しない配慮が必要です。
その他
紹介した4つの型以外にも、取り付けの簡単な「シガーソケット型」や画面にメッセージの表示ができる「カーナビ型」などそれぞれの機器の特徴を活かした車載器があります。
目的から選ぶ
動態管理システムの導入に期待している効果によっても、おすすめのデバイスは変わります。それぞれ特徴を紹介するので参考にしてください。
安全管理
「事故を減らしたい」「安全運転を徹底したい」のであれば、急発進や急ブレーキなど事故につながる挙動の検知・通知がすぐれているタイプを選びましょう。該当する挙動を検知すると自動的に動画を記録して管理者に送る機能がついているドライブレコーダー型がおすすめといえます。
日常業務の負担軽減
日々の運行日報の作成など、日常業務の負担軽減が目的であれば、求める補助機能を有しているシステムを選んでください。ポイントは、各機能の詳細まで確認して選ぶこと。たとえば、日報作成の自動化といっても、項目や機能はさまざまです。導入してから「こんなはずじゃなかった」とならないよう、具体的に求めている作業の効率化・自動化が実現できるか、事前に確認しておきましょう。
配送効率の改善
効率を上げるには、無駄を可視化して省く必要があります。そのためには、現状把握のための正確なデータが取得できる車載器を選ぶのがポイントです。
配送の効率を上げたいのであれば、高いGPS精度を誇る車載器や車両位置を一覧表示できる車載器など、配送効率を上げるためのデータ取得に役立つ機能を備えた機器を選びましょう。
コミュニケーション効率の向上
スマートウォッチ型やカーナビ型、スマートフォンアプリ型の車載器のように、管理者からのメッセージを画面に表示できるデバイスはドライバーとのスムーズなコミュニケーションに役立ちます。電話でのやり取りと比べてロスが少なく効率アップを図れるでしょう。
動態管理システム導入の流れ
動態管理システムの導入を考え始めたら、まずは現状抱えている課題を明確にしましょう。課題が見つかったら、解決の方法として最適なシステムを選択します。いきなり目的を設定するとなると必要のない機能を求めてしまうリスクがありますが、課題から考えるようにすればゴールを見誤りません。
目的が決まったら、比較検討をしましょう。機能単体で見るのではなく、自社に導入した場合をシミュレートし、多角的に判断してください。あくまでも目的達成のためにシステムを導入するのであって、システムの導入自体が目的になってしまわないように気をつけてください。
動態管理システムの導入事例
株式会社traevoは、“物流業界のバリアフリー”を目指して動態管理プラットフォームを提供しています。「物流業界に標準的な規格がない」ことを課題ととらえ、企業間でのデータ共有・活用を叶えるプラットフォームを考案、サプライチェーン全体で情報のバリアフリー化を目指しています。
たとえば、これまでは配送状況ひとつ確認するにも荷主、運送会社、孫請け……と電話で順番に問い合わせる必要がありましたが、企業の垣根を超えてデジタルデータを共有できればこのようなアナログ手段を取らずとも一瞬で照会することができます。
【関連記事】「運送事業者だけではない。サプライチェーン全体を包括したDXに取り組むtraevoの挑戦」
まとめ
動態管理システムを導入すると、得られるのは、主に次の3つです。
- 生産性の向上
- 労働環境の向上
- コストの削減
これらの導入成果を得るには、
- 会社のメリットだけでなく社員のメリットも伝える
- データの活用法を考えておく
- 導入成果を共有する
などしっかりと準備をしておくことが重要です。
どのシステムを導入するかは、車載器や目的と自社の状況などを総合的に判断しましょう。動態管理システムは、正しく活用すれば効率化の強い味方となります。時間を取って自社にとって最適なシステムを探してみてください。
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