解説:みんなの物流DX編集 本記事は「運送事業者のDX、どうやって進めたらよいのでしょうか」の補足です。 元の記事はこちらからお読みください。![]()
航空会社のKSF(キー・サクセス・ファクター、成功要因)は保有航空機1台当たりのフライト回数
株式会社城山の本田さんの話に登場した「航空会社の考え方」は、非常に大事な考え方なので、補足記事を用意いたしました。ビジネススクールなどでは必ずと言っていいほど授業で登場する米サウスウェスト航空のケースです。 まず、少し古いですが1999年の米国主要航空会社の営業利益率をご覧ください。

サウスウェストエアラインが16.5%と、他の航空会社よりもとびぬけて営業利益率が高いことがわかります。特筆すべきなのは、サウスウェストがいわゆるLCCだということです。つまり、単価は安いのに、利益率が高いということです。
サウスウェストの営業利益率の高さは座席利用率の高さではない
こうした場合、最初に思い当たるのは、「サウスウェストの座席利用率はずば抜けて高いのではないか?」ということです。しかし、実際はそうではありません。同じ1999年の米国主要航空会社の座席利用率は以下のようになっていました。

サウスウェストの69.0%は、むしろ低い方だともいえるでしょう。それでは、サウスウェストの営業利益の秘密は何なのか。それは圧倒的に多い、保有航空機一台当たりのフライト便数でした。つまり、一台の保有航空機を何回空に飛ばすのか=陸上に滞在する時間をどれだけ減らすのか。本田さんの事例で登場した「航空会社が儲かる秘訣」のことです。

保有航空機が少ないことはほかの費用にも波及する
保有航空機が少ないということはどのような効果があるのでしょうか。
当然、毎年の減価償却費は少なくなります。また、それだけではなく、保有航空機が少ないということはそれだけメンテナンス費用も下がります。保有航空機を置くスペースも空港に必要です。航空会社は空港から費用を支払って借りています。そういった空港に支払う費用も節約できます。見かけ上は保有航空機の減価償却費だけに影響があるように見えますが、実はほかの多くの営業費用を下げる効果があるのです。
運送事業者にもヒントになる
保有航空機を少なくすることで利益を出そうとするアイディアの構造は、運送事業者にも当てはまるところが大きそうです。減価償却費の削減、メンテナンス費用の削減、保険料の削減、土地代の削減、ほかにも色々波及効果があるかもしれません。一考の価値はあるはずです。
保有航空機を少なくするためにサウスウェストは何をしたのか?
ひと口に保有航空機を少なくすると言いますが、サウスウェストはそのために何をしたのでしょうか。
少ない航空機でたくさんの便を飛ばすには、ターン・アラウンド・タイムを短くする必要があります。ターン・アラウンド・タイムとは例えば、千歳-羽田便を考えたときに、千歳から羽田に入った航空機が機体のチェックを行い、機内の清掃を済ませ、荷物の積み込みを行い、再び乗客を入れて千歳まで出発するまでの時間です。
以下、サウスウェストが行ったことをざっと列挙します。
・乗客が座席を選べなくする(順番に後ろから詰めさせることで搭乗時間を短くする)
・保有航空機をすべて同じ種類にそろえる(メンテナンスや清掃の時間短縮)
・ターミナル空港を使わない(乗り継ぎ客を減らし、荷物の積み替えを減らす)
いかがでしょうか。サウスウェストの考え方は徹底していました。保有航空機をすべて同じものにそろえるというのは、運送事業者にもヒントになるのではないでしょうか。
とはいえ、タイムスケジュールの可視化が前提
株式会社城山の本田さんが言及した「航空会社のビジネスモデルを運送事業者に横展開した」という背景はこのようなものです。しかし、大前提としてタイムスケジュールの可視化が必要です。そのために、本田さんはデジタコを顧客に導入し、時間の管理ができるような下地を整え、運送事業者のビジネスモデルの大改革を成功させました。デジタコは物流DXの第一歩と言えるという事例でした。
参考文献:Southwest Airlines in Baltimore ,Harvard Business School, By Rogelio Oliva, Jody Hoffer Gittell, David Lane(2002)
株式会社城山の本田さんの物流DX解説記事はこちらからお読みください。

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