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※編集部注:本記事で紹介されているツールやサービス等をお使いの際には、必ず所属する企業のセキュリティーポリシーをご確認の上、それぞれの企業のルールに合わせてお使いください。また、紹介しているサービスの提供終了や仕様変更等が行われる可能性がございますので、ご了承ください。使い方のご質問についてはお受けいたしかねますので、あらかじめご承知おきください。

株式会社ロジックスライン
統括次長(物流経営士)
加藤 政就 氏

■株式会社ロジックスラインについて■
成田空港のすぐそばに本社を、空港内に営業所を構える輸送のプロフェッショナル集団。
中でも「品質」にこだわり、経験の浅いドライバーでも一定以上のサービスを提供できるようDXを推進し
「輸送の未来は明るい」と確信している。
その立役者である加藤氏に、同社が実践している低コストDXについて聞いた。

株式会社ロジックスライン 公式ウェブサイト http://logics-line.co.jp/

まずは「Google Workspace」

加藤さん大いに語る

加藤さん:本日は物流DXのインタビューでしたよね。

聞き手:そうです。例えば大きなシステム会社が紹介する大企業のすっごい大規模で、バーンとお金をつかって立派なシステムを組んで、「こんなの参考になんないよ!」っていう事例の紹介って、よくあるじゃないですか。いつも、こんなの見せられてどうしろと言うんだろ、って思うわけですよ。なんか、タレントのインスタグラムを見せられているような。そうじゃなくて、お金をかけず、すぐに試せて、それでいておいしい思いができる仕組みってありますか?

加藤さん牛丼みたいですね(笑)。でも、私が実践しているDXなら低コストで始められます。必要なコストはドライバーたちが使うスマートフォンの料金ぐらいです。

聞き手わー!そうそう、そういうのです!ぜひ、教えてください!

加藤さんまずは「Google Workspace」を使えるようにします。これをベースに各ドライバーのAndroidスマートフォンとつなげていきます。

聞き手:グーグルワークスペース?

加藤さん:25人まで無料で使えるグループウェアです。具体的にお見せしますね。まずはここにアクセスしましょう。

essentialsに申し込む

聞き手:Essentialsに申し込む」というのが出てきましたよ。

加藤さんそうです。申し込みます。「お申し込み」をクリックしてください。

聞き手:クリックしました。

加藤さんそしたらここに、お仕事で使っているメアドを入れましょう。

仕事用のgoogleアカウントの作成

聞き手:Gmailじゃなくていいんですか?

加藤さんGmailでもいいですし、会社で使っているドメイン(“@xxxx.com”の部分)のメールがあれば、それでもかまいません。会社のみんなが共通して使っているドメインのメールアドレスを使います。

聞き手:そしたら私は「@jp.fujitsu.com」のアドレスを入力しますね。

仕事用のgoogleアカウントの作成にメアドを入れた

聞き手:確認メールが来るんですね。

確認メールをお送りしました

聞き手:あ、来てますね。確認ボタンを押せばいいですね。

メールアドレスの本人確認をお願いしています

加藤さんそして今から作成するWorkspaceの名前なんかを設定します。名前と姓は管理者であるご自分のもの、アカウント名は自分の会社名や部署名を日本語で入れるのがいいと思います。

セットアップを開始します

聞き手:なるほど、それではこんな感じで。

名前とグループ名を入れる

Google Workspaceの設定を行う

加藤さん:その後、いくつか必要な情報を入力していくとこんな画面が出ます。

ダッシュボードへようこそ

聞き手:ダッシュボード。何をする画面なんですか。

加藤さん:ここでドライバーをグループに追加します。ドライバーのアドレスを、この「ユーザーを追加」というところで追加していきます。

聞き手:なんとなくわかってきました。

加藤さん:さらにドライバーのスマホとメールアドレスを紐づけます。スマホの「設定」から会社のメールアドレスを追加することで紐づけができます。

聞き手:そうするとドライバーさんの社給スマホのカレンダーをいじれるようになるわけですね。

加藤さん:その通りです。

googleカレンダー
ここにドライバーさんのアカウントが表示されるようになって、カレンダーに予定を追加できる。

聞き手:つまり、加藤さんが事務所で入力した今後の予定クライアントの電話番号といった情報を、各地にいるドライバーが手元のスマートフォンで確認できるようになると。

google-workspaceの色々なメニュー
Google Workspaceの機能は色々あります。

加藤さん:実際に私も配送先の電話番号を電話帳で共有したり、次の車検日や清掃日を何日~何日までという帯でカレンダーに登録したりといった使い方をしています。

聞き手:紙のメモによる連絡方法とはずいぶん違いますね。まず会話で伝達しなくていいので、時間の制約もなくなるし、記録として残りますもんね。

加藤さん:こういうお金を掛けずにやるのもDXと言ってもいいのかなと思っています。コスト面の心配が少ないので簡単に第一歩を踏み出せるのが大きいと思います。その気になれば今すぐできますから。

google_workspaceまとめ
Google Workspaceを使ってできることをまとめるとこのような感じです。

次は「LINE」をインストール

加藤さん大いに語る②

加藤さん:次はドライバーのスマートフォンに「LINE」をインストールします。このアプリについては説明不要ですよね。

※参考サイト:https://line.me/ja/

聞き手:私も毎日のように使っています。誰でも知っているアプリなので、使用方法を教える手間も省けますね。

加藤さん:LINEの場合は「トークルーム」を作るところがポイントですね。

LINEトークルームイメージ
LINEのトークルームのイメージ

聞き手:会社で一つのルームですか?

加藤さん:基本的にはそうですが、私の場合はもう少し細かく分けています。事務スタッフ用とか、ドライバー用といった感じですね。

聞き手:それをどのように使うんでしょうか。

加藤さん:一番重要なのはドライバーからの情報収集です。

聞き手:情報収集って、新たな牛丼店がオープンとかですか?

加藤さん:(スルー)例えば初めて納品する顧客先では、ドライバーは荷卸の場所、構内の制限速度、書類を受け渡しするボックスの位置といった情報をあまり把握できていませんよね。

聞き手:そりゃ、初めての場所ですもんね。

加藤さん:そのドライバーにはスマートフォンのカメラで「どの手順で納品するのか」「注意点は何か」といったポイントを撮影してもらいます。簡単な説明を添えてLINEで共有してくれたら、次からのドライバーは同じ苦労をせずに済みますよね。

聞き手:会社の財産になりますね。でもLINEだと、メッセージが次々と流れて読めなくなってしまいますよね。

加藤さん:そこで、「Notion(ノーション)」というアプリに情報をまとめていくのです。こちらも無料で利用できますよ。

※参考サイト:https://www.notion.so/ja-jp

聞き手:まさに、コストをかけないDXですね。こういうのでいいんだよ。こういうので。

加藤さん:Notionというのは、雑に言ってしまうとメモ書きをウェブサイトとしてまとめるものだと思ってください。LINEに書きこんでもらったメモを元に、こういうページをどんどん作っていきます

notionイメージ
notionで作ったページ例。鴻巣食品は実在しません。

聞き手:難しくはないんですか?

加藤さん:慣れないうちは戸惑うかもしれないですが、慣れれば簡単です。外部向けのウェブサイトと違って、体裁に気を使う必要もないですし。ガンガン書けます

聞き手:なるほど。

加藤さん:出来上がったメモのURLをコピーしてLINEに貼り付けます。

notionリンクをコピー
出来上がったnotionのページのURLをコピーしてLINKでシェアする。

聞き手:あ、そういうことですか。

加藤さん:そうするとLINEのルームに参加しているドライバーは全員これを見ることができます。今回の記事用に作ったダミーのページです。ご確認ください。https://www.notion.so/812d0fdff96d44428bca789ffadc2485

聞き手:ちょっと整理させてくださいね。つまりこういうことですか?

lineとnotionまとめ
つまりこういうこと。

加藤さん:その通りです。高いシステムを導入しなくても、こうやって簡単に情報共有ができるようになります。

聞き手:繰り返しになりますけど、「ドライバーから情報を受け取る → Notionで新規作成・更新する → 必要とするドライバーに最新情報を発信する」という流れですね。

加藤さん:そうです。これで経験の浅いドライバーもお客さま先で迷うことなく、一定の質を保ったサービスを提供できるわけです。

聞き手:ちょっと待ってください。加藤さんってすごくないですか?こういうのお金かけて作ってる会社、結構あると思うんですが。

加藤さん:情報収集ですね。やっぱり。

聞き手:ほえー。ちなみに私、文字打ちが速くなるのでパソコンにもLINEを入れています。

加藤さん:当社でもオフィスにいる管理者や事務スタッフはLINEをパソコンで操作していますね。ドライバーから複数の画像を受け取ったり、指示書をPDFで送信したりする際も楽です。

あらためて「Notion」について

まだまだ語る加藤さん

加藤さん:Notionの使い方について補足しますね。ここには、例えば頻繁に取引のあるお客さまの情報を細かく載せていきます。

聞き手:住所、電話番号、担当者名のほかに、どんな情報ですか?

加藤さん:先ほどドライバーからの情報提供について話しましたが、受け取った画像はパワーポイントで簡単に加工できます。

聞き手:“パワポ”ですね。

加藤さん:搬入口、進入ルート、納品場所などがわかりやすくなるよう、画像に矢印や丸印を描き込んでいくのです。LINEの説明文に「道幅が狭いので注意」といった情報があれば、併せて画像に記載します。

聞き手:こうして作業したnotionのページのリンクをドライバーにLINEで送るのですね。特にお客さまや業務内容が固定化されているような、定期便が多い会社で重宝しそうですね。

加藤さん:私の場合、車両ごとのメンテナンス日や、点検を受ける工場名などもNotionに入れておきます。あとは新入社員への会社説明なども担当しているので、伝えるべき項目もまとめてあります。

聞き手:Notionにはチェックリストの機能も備わっているのですね。何をしたか、していないのか、確認できるのも便利です。

MindMeister(マインドマイスター)

加藤さん:“脱紙”するなら「MindMeister(マインドマイスター)」も役立ちますよ。

※参考サイト:https://www.mindmeister.com/ja

聞き手:やはり0円で使えますね。

加藤さん:仕事で思いついたことを紙に書き出していくと、裏紙やノートがいくつあっても足りないじゃないですか。

聞き手:私はそんな時、WordやExcelに入力していますが、ページやシートが増えてしまいあまり便利ではないんですよね。

加藤さん:MindMeisterは「マインドマップ」と呼ばれるジャンルのアプリで、その名の通り自身の考えを言葉にして地図のように展開させていきます。

聞き手:具体的に、どう使っているのですか?

加藤さん:私の場合では、当社、つまり「ロジックスライン」という言葉を最初に書き込みました。そこから思いつく「労働環境」「運行前点検」「新人教育」といったキーワードを次々に入力していくのです。

聞き手:最初に「牛丼」と入力したら、次は「生卵」「紅ショウガ」「七味」ですね。

加藤さん:牛丼で天丼※を完成させましたね(苦笑)。

※(編集部注)天丼:会話の中で同じボケを2度3度繰り返して笑いを取ろうとするテクニック。2019年のM-1グランプリで大会史上最高得点をたたき出したミルクボーイのネタも天丼の一種。

聞き手:恐縮です。

加藤さん:話を戻すと、例えば「労働環境」という言葉からは「勤務時間」「人間関係」「運転席の仕様」などのキーワードが派生していきますよね。こうして思考をマップ化し、頭の中を整理したり、イメージを膨らませたりするのに便利なアプリです。一番のメリットは、考えに抜け漏れがなくなるところですね。

マインドマップ例
マーケティングの人が使うとこうなります。一番右側に「ToDo」ができるイメージですね。

自身の仕事を深く知るべく「物流経営士」の資格を取得

加藤さんすごい

聞き手:そもそも加藤さんは、どうしてITやDXに詳しくなったのですか?

加藤さん:営業、配車、空港作業、社長補佐、新人研修……などなど、これまで多くの業務を任されてきました。その中で「タスクに追われると良い仕事ができなくなる」との発想がベースになっています。

聞き手:ITやDXが助けてくれているのですね。ちなみに、名刺にある「物流経営士」とはどんな資格ですか?

加藤さん:物流について多角的に、かつ深く知りたいと思い、会社のサポートで講義に参加して取得した資格です。在庫管理や統計学、自動化、SDGsなど、幅広く学びましたね。

聞き手:どんな方々が受講されていましたか?

加藤さん:運送業や倉庫業などの部長クラス以上が多く、当社社長の子息も資格を取りました。参加者同士のつながりが生まれたことがありがたく、今もビジネスで関りがあります

聞き手:現在はどうやってDXの知識を高めていますか

加藤さん:主にYouTubeです。別の作業をしながら再生したりして、気になる内容は繰り返し見ています。最後にお気に入りを紹介しますね。

“同じ作業の繰り返し”はDXしてしまう

加藤さんありがとうございました

聞き手:今後DXをどのように進めていきたいとお考えですか?

加藤さん:新入社員に向けた安全教育など、基本的で普遍的なものは動画で撮影してYouTubeにアップし、その他の肉付けは時代に合わせて変えていくのがよさそうです。

聞き手:動画によるDXも考えているのですね。

加藤さん:実は私物でハイスペックなカメラとパソコンを持っているんですよ。撮影や編集にも手を出したいのですが、とにかく何度も同じことを繰り返している作業はDXするべきですね。

聞き手:仕事をDXすると、どんな良いことが待っていますか?

加藤さん: “できること”が増えます。規模が小さい事業者ほど、これから必要性が増してくると思います。

【特別付録】加藤さんお勧めのYouTubeチャンネル

●綾人サロン:トラック関係者のカリスマ。日本唯一の交通教育YouTuberのようです

https://www.youtube.com/c/%E7%B6%BE%E4%BA%BA%E3%82%B5%E3%83%AD%E3%83%B3

●平岡 雄太 / DRESS CODE.:主にiPadアプリを紹介。加藤さんはこの方の影響でNotionを始めました

https://www.youtube.com/channel/UC7P3bmkbTdAXaJYzhuF2obA

●スワン:Notionの魅力について教えてくれます

https://www.youtube.com/c/swaaan

●Windows Japan:皆さんにとって身近なMicrosoft Officeをより使いこなすために

https://www.youtube.com/c/WindowsJapan

●金子晃之:Microsoft Officeのテクニックを分かりやすく解説。加藤さんは無限に見ていられるとか

https://www.youtube.com/channel/UCaxV7Sf7pdNjlahl6BtJBBw

編集部注:一部ロジックスライン様で実際に行われている手順とは違う部分がありますが、
便宜上単純化しております。ご了承ください。
また、本記事に書かれている内容は2022年12月時点の物です。サービスを提供する企業の都合によって
サービスの仕様や機能が変更されたり、中止されたりすることがあります。

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